3月9日(木)に、平成28年度いわて鋳造研究会成果発表会を、水沢グランドホテルにて開催いたしました。
成果発表会では、この一年間の研究成果について各会員企業が報告、活発な質疑応答や議論が行われました。
また、それに加えて今回は「話題提供」という形での発表も行われました。
発表内容 | 会員企業 | |
1. | 片状黒鉛鋳鉄の機械的性質に及ぼすSb(アンチモン)添加の影響 | ㈱及精鋳造所 |
2. | ヒケ特性の把握 | ㈱及泰 |
3. | フラン自硬性における球状化不良に対する塗型剤の影響 | ㈱水沢鋳工所 |
4. | 接種と合金元素添加によるキュポラ溶湯の炉前での材質変更 | ㈱根岸工業所 |
5. | シェル中子造型条件の妥当性検証試験 | ㈲佐酉 |
6. | キュポラロングキャンペーン(炉修後操業期間の延長) | 東北三和金属㈱ |
7. | 塗型剤変更による問題改善 | 岩手鋳機工業㈱ |
8. | 工程分析を使ったフラン造型作業の改善 | ㈲前田鋳工所 |
9. | 鋳造シミュレーションの解析結果と実製品の比較検討 | 岩手製鉄㈱ |
10. | 後付けセンサーによる工場管理 | ㈲前田合金鋳造所 |
11. | ホーロー処理した球状黒鉛鋳鉄の泡欠陥に及ぼす表面組織の影響 | ㈲及春鋳造所 |
12. | 工芸品の材質管理 | 及源鋳造㈱ |
話題提供内容 | 会員企業 | |
1. | 話題提供 | ㈲筑摩水沢 |
2. | 会社紹介と現在の取り組みについて | ㈱シグマ製作所 |
特別講演会 | 講師 |
“南部鉄器 極め羽釜”製造秘話 | 田村直人氏(株式会社水沢鋳工所 品質管理課長) |
発表後には、岩手大学の中澤友一特任教授に総評をしていただきました。
研究テーマは多岐にわたっていたが特に材質系の発表が興味深かった、と評価していただきました。
また、他社の研究テーマでも、自社にとっても有益と考えられるものであれば、積極的にその再現実験を行うのも良い、それで結果が異なった場合はその会社特有の条件があると気づくことができるし、参考になる部分は大いに真似をして高め合っていってほしい、と述べられていました。
成果発表会の後は、株式会社水沢鋳工所品質管理課長の田村直人氏による、特別講演会を開催いたしました。
象印の大ヒット高級炊飯器「南部鉄器 極め羽釜」の内釜は、本研究会会員企業の水沢鋳工所が製造しており、その製品開発を行ったのが田村氏です。
「内釜戦争」と呼ばれた当時の炊飯器業界で水沢鋳工所が製造することになった経緯、試作段階では形状の難しさから「巣」(内部に空洞ができる)の欠陥が多発し、様々な試行錯誤を行っていったこと、量産開始後も新たな課題が発生し、それをどうやって解決したか等のお話を熱く語っていただきました。
試作を重ねていく中では、ある課題を解決するために変更した要素が別の部分に悪影響を及ぼしてしまったり、考えうる対策を全て実行しても結果が思わしくなく悩んだ時期もあったものの、視点を変えて今まで疑っていなかった要素を再検討することで突破口が開けたという話など、田村氏のものづくりに対する粘り強い姿勢や発想の柔軟性によってこの製品が完成したということがよくわかる講演で、このような田村氏の経験談に参加者それぞれが大いに心を打たれ、また共感するところもあったようでした。
また、終了後には情報交流会を行い、成果発表や講演で聞けなかった話や意見を交換しながら、親睦を深めました。
今年度は、会員企業の新規加入や会員の博士号取得など、本研究会にとって実りある一年となりました。
来年度も、いわて鋳造研究会をよろしくお願いいたします。